- シリーズ
- OS 吹奏楽オリジナル
- 解説
- ウィリアム・H・ヒルが1979年に作曲した吹奏楽曲です。この変奏曲の主題となっているのは17世紀の聖歌として有名な「セント・アンソニー」です。ハイドンはこの曲を第2楽章に用いて有名な木管重奏の曲を書き、のちにブラームスも同じ主題による変奏曲を書いています。ヒルのこの変奏曲は、まず力強い序奏により開始され、そのあとで木管楽器が「セント・アンソニー」の主題を提示します。変奏曲は4つからなり、いずれも自由で、ダイナミックな変奏を繰り広げます。第1変奏は力強くリズミカルで、第2変奏は短いが美しいメロディに満ち、第3変奏は舞曲風なフーガです。打楽器奏者のセットのため少し間をおいてからはじめられる第4変奏は、打楽器を中心とした印象的で華やかな終章となっています。この曲はカリフォルニア州モデストのトーマス・ダウニー高校バンドの委嘱により作曲し、その指揮者ジョージ・ガードナーに捧げられました。日本では1985年のコンクールで天理高校により演奏され有名になりました。(秋山紀夫)【試聴用CD(OSCD-001)あります(無料)】
これほど数奇な運命をたどった吹奏楽曲はない。
最初は、1979年に高校バンドのために書かれた約11分の曲だった。これが、80年にカリフォルニア州立大学ロサンゼルス校ウインド・アンサンブルが来日し、作曲者自身の指揮で日本初演された。たいへん魅力的な曲だったので、翌81年の吹奏楽コンクールで文教大学が取り上げることになった。だが、このままでは制限時間内に演奏できない。かといって単純なカットでは中途半端な終り方になってしまう。そこで作曲者の許諾を得て柳田孝義氏が改訂編曲し、ラストにコラール主題の再現部が加えられた。
この年、文教大学は全国大会まで進出したが、残念ながら結果は銀賞。会場が福井市だった上、当時は金賞演奏しかライヴLPに収録されなかったせいもあり、曲もさほど知られることはなかった。
これを85年に天理高校(奈良)が“再発見”し、柳田編曲に基づく新たな短縮改訂版を全国大会で披露。今度は見事に金賞を獲得した。しかも圧倒的名演だったため、一夜にして日本中に広まった。ところが、その後、この“天理版”ばかりが演奏され、《セント・アンソニー~》といえば、こういう曲なのだと誤解されるようになってしまった。だが結局、ヒル自身もこれを公認し、日本では“天理版”のみが出版され、原曲とはかなり違った日本独自の版が定着することになる。よって本盤収録の演奏も、原曲ではなく、短縮改訂された“天理版”である。現在までにコンクール全国大会だけで18回登場、いまでも予選で多くの団体が取り上げており、日本吹奏楽界の定番名曲となっている。
この曲の主題は、ハイドンの管楽アンサンブル曲《6つのフェルト・パルティータ》第6番第2楽章、通称〈セント・アンソニーのコラール〉と呼ばれる旋律である。守護聖人アンソニーにちなんだ曲だ。のちにブラームスの《ハイドンの主題による変奏曲》(2台ピアノ曲。管弦楽版もあり)でさらに有名になった。
ヴァリエーションズ(変奏曲)というよりは、旋律が解体・変容していくような不思議な面白さがある。
作曲者ウィリアム・ヒル(1930~2000)は、第529空軍バンドにも所属していたことがある作曲家。1977年には《神聖な舞曲と世俗的な舞曲》で、優秀な吹奏楽曲に与えられるオストワルド賞を受賞している。(富樫鉄火、「New Standard Box」ライナーノーツより) - 作曲者
- William H. Hill
- 編成
- フルスコア付き
- 音源CD
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