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No.51 みんなリードが好きなんだ!!

 吹奏楽界の巨匠アルフレッド・リード氏がこの世を去ってから1年。『アルフレッド・リードの世界』と題する本を1996年に佼成出版社から出版させていただいてから10年がたちました。25年にわたるリード氏との親交は、私にとってかけがえのない時間でした。今でもあのお元気な姿が昨日のことのように思い出されます。そして最近、ふたたび多くの団体がリード作品を演奏してくださっていることを、とてもうれしく思っています。
 実は、これまで中学校の小編成吹奏楽部を担当してきた十数年間、私はリード氏の作品をほとんど取り上げませんでした。分厚いクラリネット・セクションが全体のサウンドの基盤を形作っていることや、トランペットとコルネットの使い分けなど、リード氏の作曲意図を知っているだけに、クラリネットが4人程度の小編成バンドでリード氏の音楽が実現できるはずがない…と最初からあきらめていたのです。
 小編成バンドは本当にリード作品を楽しむことができないのでしょうか? リード氏が亡くなってすぐ、地区のイベントで本校吹奏楽部は曲目を変更して『スラヴ民謡組曲』を追悼演奏しました。『ロシアのクリスマス音楽』がなかなか出版されなかった時代に、初級用に手直しして出版したものです。わずか1週間の練習で危なっかしいところもありましたが、確かに『ロシアのクリスマス音楽』の香りがしました。そのとき私は、少人数でもリードの世界を楽しむことができるのではないか、楽しむチャンスを与えてもいいのではないかと感じました。
 それから1年、今年度の本校の定期演奏会では『インペラトリクス』に挑戦しました。懐かしいメロディが校舎から聞こえてくると、まず私が真っ先にニコニコ顔。生徒たちからも「カッコイイ!」と大好評。職人技の音の重なりあい、共感を覚える音楽の運び、期待通りのクライマックス…そこにはっきりとリードの世界がありました。話を聞きつけた卒業生たちが「懐かしい」と本番の演奏に参加してくれて、思わぬところで世代間の交流も生まれました。昭和50年代に私があこがれたのと同じように、生徒たちがリード作品に親しんでくれたことは、とてもうれしかったです。リード氏の音楽は時を越えて愛されるんだ!と強く感じました。
 そう、みんなリードが好きなんだ!


 リード氏を失った悲しみのなか、『オセロ』のスコアをふと手に取りました。冒頭から宝石をちりばめたような音符が頭のなかでいきいきと鳴り出しました。アーティキュレーション(アクセントやスタッカートなど)や発想記号など、隅々まで配慮の行き届いたリード氏らしい楽譜です。なんという緻密な仕事! この仕事をリード氏は紙と鉛筆だけで行いました。まるでコンピュータのよう! しかも、リハーサルや初演後に書きかえたという話は聞いたことがありませんから驚きです。
 一瞬ですべてを伝える美術作品と違い、音楽は時間の流れに沿って筋道を立てて伝えていく芸術。私たちが音楽のどこに魅力を感じるかというと、その美しさやリズムもさることながら、時間に沿って展開される物語ではないでしょうか。オープニングを聴いて先々を予想し、期待通りの展開に共感したり、意外な進展に新鮮さを覚えたりします。映画やテレビドラマも同じですし、スポーツの試合にもドラマを発見して感動することがあるでしょう。リード氏は物語をつくる名人でした。情感をどのように高め、高まった情感をどう収めるかについて、卓越した手腕をもっていました。伝統的な分かりやすい形式の上に立ち、魅力的な作品を書きました。
 リード氏と同時代を生きた私たちは、リード氏の「新曲」の誕生に立ち会い、祝福することができました。それらの作品が今や吹奏楽の「古典」となりつつあります。リード作品を演奏することは、人類が築いてきた伝統を私たちの内面に取り込み、それを継承することにほかなりません。音楽経験が十分でない中高生たちには高度な曲に挑戦する前に(挑戦するならなおのこと)、リード氏のスタンダードな曲に親しんでほしいと思います。きっと新しい時代を切り開くための知恵や糧を得るはずです。小編成バンドでもいかがですか? 楽譜のキュー(代奏のための小音符)はそのために用意されています。天国のリードさんもきっと喜んでくれるでしょう。
 リード氏の命日の9月17日、フロリダ州のマイアミ大学で一周忌の追悼演奏会が催されました。最初にリード氏を日本に紹介した親友の秋山紀夫氏(日本吹奏楽指導者協会名誉会長)、リード氏の教え子の助安伴之氏(ミュージックエイト)、そして私の3人が日本から参加しました。マイアミ大学の授業で構成する吹奏楽団や管弦楽団がリード作品を次々に演奏しました。リード氏は音楽産業学科の所属で、作曲科の教授ではありませんでしたが、マイアミ大学はこの演奏会で「大作曲家アルフレッド・リード」への最大級の敬意を表したのです。
 フィナーレは秋山氏が指揮する大編成オーケストラによる『ロシアのクリスマス音楽』。感動的なエンディングに観客は総立ち。管弦打の教授陣、人種もさまざまな学生たち、そして全米からのファンも、みんながリード氏を讃えました。
 そう、みんなリードが好きなんだ!

山形県・東置賜郡川西町立第一中学校吹奏楽部
村上 泰裕

団員数:男子4名 女子26名   ※団員数は掲載当時のものです。
モットー:「一致団結」「We love music!」

■リード氏一周忌の追悼の意を込めて、リード研究の第一人者である村上先生に、2回連続で 寄稿いただきました。 なお、リード氏と村上先生の共著『アルフレッド・リードの世界』 (佼成出版社刊)は、全国の書店や楽器店で扱っています。

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