No.79  安らぎや勇気を与えてくれる……

  数年前、私は吹奏楽部顧問を任された。文化部というイメージから最初は、楽器の練習がこんなに時間を要するものとは知らず練習時間の長さに驚いた。活動はほとんど毎日で土、日も1日練習。体力重視の運動部でも休養日をもうけるところを、少々寝不足や風邪気味でも早朝からラッパを吹いている。また、違和感があったのは、合奏や楽器別に指導してくれる外部講師の人たちだった。部員に荷物を持たせ校舎内を我が物顔で歩き、はるばる関東、関西から何響か何フィルかの権威をひっさげてやってくる。学生時代にサークル活動程度の経験しかない私にとっては、音楽の世界だけの価値観や師弟関係がすべてに通用するかのような彼らの態度や言動も理解できず、音楽そのものにも抵抗感を抱いていた。 
 しかし、本校吹奏楽部の活動がコンクールだけに偏っておらず、地域のイベント参加、幼稚園や小中学校、病院や施設への慰問演奏など幅広く行っていくにつれて、音楽というものの大衆性、公共性が肌で感じられるようになってきた。地元で演奏会をするたび、多くのファンが押しかけ、お年寄りや子どもたちが応援してくれる。母親になった卒業生たちが何十年ぶりに声をかけてくれたこともある。他校の顧問の先生方、地域振興会や行政の関係の人たちとも顔見知りになった。部員たちの自発的な行動に心動かされ、大会や演奏会の手続きや手配など雑用しかしていない私を慕ってくれる彼女たちや、いろいろ気遣ってくれる保護者の存在も知った。クラシックにも少しずつ興味がわいてきて、何より音楽家の人たちと会っても素直に感謝の気持ちを表せるようになった。音楽が人々に安らぎや勇気を与えてくれる芸術だとも実感できた。
 自分のような人間が生涯出会う人は限られている。しかし、吹奏楽に関わることで、学校活動という限られた中だけでなく多くの方々と接し、なつかしい人々とも意外な場所で再会できたりする。演奏を聴いてくれた人々が、逆に、今の自分に元気や希望を与えてくれているのである。
 今春、私にとって何回目かの3年生が我が部を巣立っていった。彼女たちと多くの人々に関われたことに感謝の気持ちを表したく、ペンをとった次第である。

静岡・浜松海の星高等学校吹奏楽部
砂子 幸弘

団員数:女子85名   ※団員数は掲載当時のものです。
部 訓:音楽しよう、Never Ending Challenge

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