No.89  音楽に必要なのは、ときめき♪

 体育館で演奏されたフルートの音色に、前から2列目で口を開けて見つめていた小学6年女子。室内オーケストラのコンサートだったのに、フルート奏者の音しか覚えていない一点集中型少女。数十年前の前田綾子であります。
 3歳からピアノを習い、いろんなクラシック音楽を普段からよく聴いていましたが、実際に生のフルート演奏を目の当たりにして、その音色に、その空気の響きにノックアウトでした!
 帰宅してすぐにフルートをねだり、「フルート買ってくれたら毎日練習するから!」と、必死に両親を説得。何日かかかりましたが、買ってもらえることになって自宅に楽器が届いたときには、まるで宝石を見るようにケースのふたを開けたときめきを今でも覚えています。
 教則本を見ながら独学で1年ほど練習したのち、中学で3年間、吹奏楽部でフルートを吹くことになります。当時の顧問の先生はとても厳しい先生でしたが、音楽への、吹奏楽への情熱が生徒たちにしっかり伝わる先生で、音楽に限らずチーム作りの大切さなどいろいろ学びました。目の奥に大きな光を感じる熱血顧問でした。
 そののち、私はプライベートレッスンでフルートを学びながらも美大に進みたくて、吹奏楽部のない女子高へ進みます。美術部で黙々と絵を描く日々。フルートもピアノもレッスンに通っていましたが、何か物足りないと感じていたのか、高校の軽音楽同好会に入会し、なぜだかドラムを担当していたという過去があります! ヴォーカル担当の女の子が"POLICE"(スティング)ファンだったこともあり、POLICEの音楽をいくつか演奏した記憶が…。どうやってドラムを演奏していたんでしょうね〜(汗)。当時の自分に聞いてみたいです。
 美大へ進みたかったのに、絵で進学するには全然レベルが足りなかったようで、担任、美術部顧問の先生や、フルートやピアノの先生にまで「あんたはフルートで進学したら?」と説得され、大学そしてフランス留学とクラシックフルートの道へのレールが敷かれていきました。今でも絵画やデザイン、美術系の世界には夢中になれる気持ちがありますが、小さいころから音楽に親しみ、フルートに出会い、吹奏楽部で大切なものを得た体験は、現在へのまっすぐな1本の道になっているような気がします。
 TKWOに入団するまでは、吹奏楽というジャンルからは離れていたわけですが、数年前に中学以来の思い出に出会う体験がありました。あるとき、吹奏楽コンクールの大会審査中のこと、ある学校の演奏を聴いているときに指揮が我が恩師であることに気付いたのです。まさかと思ってパンフレット掲載の名前を確認するとやっぱり先生。もちろん、それはコンクールでしたから、私が教え子ということは明かしませんでしたが、のちに連絡を取り、転任された恩師の教える中学校のコンサートで夢の共演を果たしました♪
 また同じ年、母校でも定期演奏会で後輩たちと共演する機会をいただきました。何が幸せって、こういう瞬間です! 自分のルーツ、今の自分の出発点となった地、恩師に再会できて、これから過去の自分と同じような体験をするかもしれない学生の皆さんと吹奏楽を通して時間を共有できること、シンプルにピュアに幸せです♪
 ステージで共演者と同じ感覚を共有でき、また会場のお客様とも同じ空気を体感できる「息」のアンサンブル、今後もたくさんの出会いを大切にしていきたいと思います。

前田 綾子

 大阪府出身。 神戸女学院大学音楽学部をハンナ・ギューリック・スエヒロ賞受賞し卒業後、94年より渡仏。パリ・エコール・ノルマル音楽院、フランス・ロマンヴィル国立音楽学校、フランス・オルネー国立音楽学校、パリ20区立音楽院を全て満場一致の首席一等賞を得て卒業。エコール・ノルマルにおいて「最高栄誉賞“スペシャル”」受賞。留学中、パリUFAM国際コンクール、イタリア・クレモナ国際音楽コンクール、パリ・ルテス・フルートコンクール、L.WURMSERパリ・フルートコンクールに優勝。各地でガラ・コンサート等に多数出演。これまでに曽根亮一、佐久間由美子、クリスティアン・ラルデ、工藤重典、ブノワ・フロマンジェ、パトリック・ガロワの各氏に師事。 97年パリ・サル・コルトーにてソロリサイタル、大阪いずみホールにて帰国リサイタルを開催。以後、数多くリサイタルを行うなか、01年大阪イシハラホール「スプリング・ガラ・リサイタル」、06年東京オペラシティ「B→C」リサイタルなど、ホール主催のリサイタルにも多数出演。 99年大阪でのリサイタルに対し、大阪文化祭奨励賞受賞。 近年より中国、シンガポール、台湾などアジア方面においても、ヤマハ株式会社提供によるコンサート、マスタークラスを展開。アンサンブルではフルート・カルテット「キャトル・クルール」のメンバーとして幅広く活動。また、小澤征爾指揮サイトウキネン・オーケストラ、チョン・ミュンフン指揮アジア・フィルハーモニー管弦楽団の韓国・日本公演、フランス・パイヤール室内管弦楽団の日本公演、水戸室内管弦楽団などにも参加。 01年より東京佼成ウィンドオーケストラ・フルート奏者。 ソロアルバム「ミニュイ/午前零時」(CACG-1031)、「ピュリティ」(CACG-1071)をリリース。

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